音声学本「脱・日本語なまり」レビュー
結論
発音の練習方法が明確でわかりやすい本です。
単に知識としてでも、発音矯正にも、日本語で書かれた音声学の本の中で最もおすすめの本のうちの1つだと思います。
概要
モノクロ一色刷りで、開いた時の見た目は他の音声学本と同じような感じです。音声学の内容に加え、全体を通じて日本語訛りの観点から見た章立てとなっています。英・米発音に言及されています。他の同系統の本と同様に、カテゴライズ、章の並び順も大きくは音声学的括り順となっています。外部サイトにダウンロードできる動画・音声データがあります。
音源及び動画について
音源及び動画について、本に記載のURLが変更になりリンク切れになっています。新しいURLのリンクは以下となります。
PCであれば、一括ダウンロード用にcromeやfirefox拡張機能アドオン(DownThemAll!など)を追加すれば手早くダウンロードできます。
※動画ファイルについて、動画ファイル形式が「mpg」、音声ファイル形式が「wma」「wav」のため、PCでは再生可能ですが、スマホでは再生できません。これらのファイルをスマホで再生するにはPCもしくはファイル形式変換サイト等で、動画は「mp4」、音声ファイルは「mp3」などに変換する必要があります。
内容の紹介
この本の特徴・おすすめポイント
- 我々日本人が気づきにくい訛りを指摘してくれる
- 日本語にない音や、日本語なまりになりがちな音について正しい音を出せるように工夫されています。
- 練習方法がわかりやすく、誰もがイメージしやすい
- 発音の練習方法について、「△△に近い音を出しましょう」というような個人の感覚に頼った曖昧なものではなく、例えば、「日本人が出せる◯◯の音から出発して、口をこのぐらい開けて、ここに舌を当てて…この音を出したら有声音にして…」というような、比較的に誰もがわかりやすく到達し易い方法で教えてくれます。
- 複数音の組み合わせ
- 日本人が発音しづらい子音の組み合わせにも焦点を当てられています。
この本の気になるポイント
全体を通して話し言葉で書かれており、講義をそのまま文字起こししたような親しみがある雰囲気の本です。この点は人によっては、気になる方もいるかもしれません。
コンテンツ
- 序章 気づかない日本語なまり
- My Fair Lady と母語なまり 日本語なまりの蔓延
- 声の介在
- チェック「日本語なまり」
- 第I章 日本語の音と音声学の基礎
- 序論
- 声の介在
- 鼻のはたらき
- 閉鎖音
- 摩擦音
- 破擦音
- 有声摩擦音と有声破擦音
- ラ行の子音
- 半母音
- 拗音
- 撥音ン
- 子音の分類
- 母音分類の基礎
- 母音の限界
- 母音の分類
- 日本語の母音
- 母音の脱落とアクセント
- 長母音
- 第II章 英語の音と日本語なまり
- 序論
- 母音の有無を知る
- 一脱・日本語なまりの基礎一
- LとR
- [f] と [v]
- [θ] と [sz]
- [ʃ]と[ʒ]
- [h][w][ʍ][j]
- [m][n][ŋ]
- [pb][t d][kg]
- イに類する母音
- エに類する母音
- アに類する母音
- オに類する母音
- ウに類する母音
- 二重母音など
- 音連続
- [pm bm tn dn]
- [tl dl]
- [p t k]+[h] と [bv vb]
- [tθ dð] など
- [tɹ dɹ]
- [sθ θs zð ðz]
- 英語閉鎖音の特殊性
- 英語歯茎音の変容
- 音の脱落 (抄)
- 音の挿入(抄)
- 休憩室
- 第III章 その他の外国語の音と日本語なまり
- 序論
- 他の外国語で用いられる音
- 日本語なまりと英語なまり
- 非肺氣流子音
- アラビア語、イタリア語、インドネシア語、ウルドゥー語、オランダ語、ギリシア語(古典ギリシア語)、ギリシア語(現代ギリシア語)、クロアチア語とセルビア語、スペイン語、スワヒリ語、チェコ語、中国語、朝鮮語(韓国語)、ドイツ語、トルコ語、ハンガリー語、ヒンディー語とサンスクリット、フランス語、ブルガリア語、ベトナム語、ヘブライ語(現代ヘブライ語)、ペルシア語、ポーランド語、ポルトガル語、ラテン語、ルーマニア語、ロシア語
- ほか、おわりに、や索引等は省略
まとめ
こういった知識があまりない状態で読んでみると、いかに母国語に引っ張られた癖が無意識に出るものかと気づき、とびっくりさせられます。自分でも気づかないうちに日本語の訛りによって別の音になってしまっていたら、とても由々しき事態ですよね。
こちらの本は他に比べて、発音の教え方がもう一段階わかりやすい物が多いので全体的に助かっていますが、個人的感想としては、特に日本語話者が一般に差異を認識できない[ʒ]と[dʒ]の区別や、[θ] と [sz]、[ʃ]と[ʒ]、[h][w][ʍ][j]辺りが、良かったと思います。機会がありましたら、ぜひ手にとって見てください。